だまし打ちは禁物
第14号:2020年9月号
注射を打つことを直前まで知らされず、いきなり診察に入ってきて注射だとわかり、激しくパニックをおこすお子さんがいます。これを我々は「だまし打ち」とよんでいます。親御さんにしてみれば、事前に注射だと知らせると愚図ってそもそも病院に行きたがらない、そのため伝えないで連れてくるという言い分なのですが・・・。診察だけだと思って連れてこられて、いきなり注射を打たれる子どもの身にもなってみてください。“だまされた”と心の中で落胆していることでしょう。
では、次に本当に診察だけで病院に行くときはどうでしょうか。今日は本当に診察だけだからと言って、お子さんが信用するでしょうか。この前もそういって注射だった、だから今回も行きたくない。愚図りながら泣き始める。もう二度と病院には行かないというかもしれません。
結果的に、最初の時点で注射することをきちんと話し、さらにどうして注射が大切なのかも説明し、多少愚図っても、時間はかかっても正直に伝えた方が良かったとなるわけです。そして、頑張ったらしっかり褒めてあげる。子どもとの信頼関係を築いていくには、日々のこうした積み重ねが非常に重要になります。まただまされたという先に築ける親子関係は良好となるでしょうか。いつもお母さん・お父さんは正直に話してくれ、教えてくれ、励ましてくれ、最後には味方になってくれる。こどもに与える安心感により、親を信頼し家庭に安らぎを感じるのです。
これをセキュリティーベースと呼んでいます。いわゆる安全基地です。この安全基地があるからこそ、外にでて冒険ができる。様々なことにチャレンジしたり、それにより失敗したり、辛い思いをするかもしれない。それでも、エネルギーをチャージできる場所があるからこそまた頑張ることができる。
どうぞ日頃からお子さんと温かい信頼のベースを築いてください。だまし打ちは禁物です!