二分の一成人式
第33号:2022年4月号
「私は、子どもの病気を治すことのできる人になりたいです。理由は、5歳の時医師であるお母さんが、患者さんが苦しそうな時に、冷静に話を聞いて診察していたのを見て憧れたので、子どもの病気を治すことのできる医師になりたいと思いました。また手術等をする外科医ではなく、人とコミュニケーションがとれて、言葉で通じ合える医師になりたいと思います。そのために今できることは、いろいろな勉強をして、人とコミュニケーションをとって優しい気持ちを作っていくことが大切だと思いました。これからもそれを達成できるようにがんばりたいと思います。また私の好きな名言は、“聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥”です。これからもいろいろな人にいろいろなことを聞いて成長していきたいです。」
震災の年に産まれた10歳の娘が、先日学校の参観日(オンライン)で発表していました。リアルタイムで観ることはできませんでしたが、後から録画したものを観て胸が熱くなりました。娘が幼い頃は勤務医で、お盆も年末年始も働いていました。朝保育園に預けて働いて、仕事が終わると迎えに行く日々でした。日曜日に娘を連れて出勤することもありました。仕事と生活に追われて必死で、いつも疲れていたので優しくできず、娘の寝顔を見て後悔することもしばしばありました。
私が娘に「医者になりなさい。」と言ったことはこれまで一度もありません。5歳の時にクリニックを開業して、今年で5年目を迎えるタイミングで、10歳の娘がこのような気持ちを持っていてくれたことがとても頼もしく、誇らしく感じました。これから思春期に突入して反抗期を迎え、気持ちが変わってしまうことももちろんあるでしょう。それはそれで受け止める覚悟は、すでに持ち合わせています。この10年間、子育てをしてきたと思っていましたが、育てられているのはまさに親の方です。「子育ては親育て」といいますが、子どもの存在で親にしてもらっている、親になってみて初めてわかる親の苦労や気持ちがたくさんあるものです。
私を10年間親として育ててくれた娘に、心からの敬意を払ってこれからも共に生きていこうと強く思いました。娘が好きな名言“聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥”は、私が小学3年生の時に父親に教えられて大事にしてきた言葉で、幾度となく話してきました。父は2018年に他界しましたが、時を超えて受け継がれる嬉しさを噛みしめながら、あらたな年度を迎えます。