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境界線を意識してみる

2023年12月8日

境界線を意識してみる

第52号:2023年11月号

 職業柄、お子様の病気(病状)と日々向き合うのですが、病気だけではなくお子様自身や養育環境、とりまく状況などにも時には踏込むこともあります。治療が必要となっても、当然幼いお子さんにとってそれは親を始めとする養育者にケアしてもらう必要があります。風邪や胃腸炎等その時々で完結するものもあれば、私が専門とするアレルギーの病気(アトピー性皮膚炎や食物アレルギー、喘息等)は、長期的に継続してケアしていく必要があります。

 喘鳴を繰り返して、喘息治療が必要な旨をご説明しても納得してもらえなかったり、喘息治療を開始してもいつのまにか中断されてしまったりすると、われわれ医療従事者もさすがに堪えます。それはなによりお子さんのためにならず、特に喘息は呼吸不全となれば命に関わるからです。これまでクリニックからも、何十台と救急車で搬送しています。時に看護師が救急車に同乗して病院に向かうこともありました。以前は私も真剣になりすぎて、親御さんを責めるような口調となってしまい、結果何十倍の怒りとなって帰ってきたことも一度や二度ではありません。怒りの基本は押し返す力なので、これ以上踏込んで欲しくないという表現だと今は理解しています。

 そこで意識するようになったのが、境界線です。お子さんの病気や病状に誠意をもって向き合い、その時々で真剣に説明をするけれど、それを受け入れるかどうかは相手(親御さん)の自由であるということです。また、私の説明では納得できなくても、その後状況が変わることもあれば、別の先生で治療にうまくのることもあるだろうと考えるようになりました。そしてお子さんには本来、病気を良くしていこうとする力が備わっています。それは人生をよりよいものにしていこうとする力でもあります。

 この境界線を意識することは、自分自身を意識することにも繋がります。相手の境界線を越えて踏込み過ぎないようにすることは、相手にも自分の境界線を越えて踏込まれないようにすることが大切だとわかるからです。親子・夫婦・親戚・友人・仕事関係これは全ての人間関係に言えることだと思います。

大切な人間関係こそ境界線を意識して、相手の人生は相手のもの、自分の人生は自分のものとお互いに尊重していきたいものです。